文部科学省の平成27年度予算案によれば、スポーツ庁は、アスリート長官のもと職員120人規模で今年10月に創設するとし、組織構成は、文科省スポーツ・青少年局の3課をもとに時限的な「オリンピック・パラリンピック課」も含めて5課に改編されるという。しかし、この案は、長年スポーツ行政の一元化を担う省庁を待望してきた成果になるのだろうか。加えて、スポーツ基本法の附則で釘を刺されている「政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮」した組織と言えるだろうか。一方、オリンピック担当大臣の任命は遅れているが、予定通り新大臣が誕生しても担当組織を持たなければ、重要な業務を迅速に遂行できるのか疑問を感じざるを得ない。

そこで提案したい。現段階は、’20年東京五輪・パラリンピック大会の開催準備を加速化させるのが喫緊の課題である。したがって、’20年大会終了までは、慌しくスポーツ庁を創設するより、東日本大震災に復興庁、復興大臣、復興基本法で対処しているように、オリンピック担当大臣をトップにした五輪庁として創設することを提言する。一方、スポーツ庁については、今後5年の間に、将来的な組織、財源、権限等について改めて関係省庁が熟議を尽くしてはどうか。その結論を基にして、’20年大会終了後に五輪庁を大幅に改編しスポーツ庁に移行することを提言したい。

この提案趣旨は、大会準備に国家的な課題が横たわっていることにある。’20年大会の成功に向けた政府や行政の重要な役割は、メダル量産を支援することではない。テロ対策、入国対策、交通規制、混雑整理など極めて困難な危機管理に向けて、特別措置法や時限法の制定、及び、安全保障の国際連携など、政府主導による万全な対策が不可欠であろう。その総合調整機関として五輪庁が特命を受けることが重要ではないだろうか。そのために、五輪庁は時限法による権限を強化して、内閣府の外局にすることで省庁間の総合調整が加速されると期待したい。なお、五輪後のスポーツ庁改編に際しては、民間人長官の任命と文部科学省外局への移動は十分理解を得られるだ

鈴木知幸

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