「熱中症判決」から見えること
まだ肌寒い季節には馴染まない話しかもしれないが、「熱中症」が、最近、部活動関係者の間で話題になっているという話を聞いた。テニス部員だった女性が部活動中に熱中症で倒れて重い障害が残ったとして、県に損害賠償を求めた大阪高裁の控訴審判決(1月22日)である。控訴審判決は「顧問が活動に常時立ち会い、監視義務を負うものではない」とした一方で、「部員が指示通りに練習をしている場合、危険性が生じないように指導すべき義務がある」と判示した。「指導者に厳しい注意義務を課した判決」との評価が一般的なようであるが、法律家の目でみると、安全配慮義務に関する判例からするとそれほど厳しいもののようにも思えない。県側は上告したそうだ。
ところで、日本スポーツ振興センターの「学校の管理下における熱中症の発生状況」によると熱中症による医療費の申請件数が増加しているという。2011年以降毎年、約300件ずつ増加し、2013年には5000件を突破した。龍野高校事件が起こったのが、2007年5月である。同県では、事故後に新たな通知を出したり取り組みをしたりしていないという(朝日新聞2015年1月23日)。部活動を「安全な場」とするために、法支援・研究センターでも積極的な情報発信が求められるところである。
あらためて、同事件を判例データベースなどで調べてみると、判例評釈がヒットしない。この事件に限ったことではないが、スポーツ事件に関する判例評釈が少ない。自戒の念も込めつつ、スポーツ判例に関する「判例回顧」を出してみてはどうだろうか。
石堂典秀
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