地域スポーツジャーナルにみるスポーツ権の諸相
最近、地域のイベントや地元出身の選手などの情報に特化した地域スポーツジャーナル(以下、地域SJ)が全国各地で発行されてきている。これらは、単に地元愛好者の「読むスポーツ」の楽しみだけではなく、発行者・編集者(以下、発行者等)の楽しみ、すなわちスポーツを通じて幸福で豊かな生活を営む権利(スポーツ基本法。以下、スポーツ権)に関わるものでもある。
ところで、長野県では、5誌もの地域SJが発行され、それぞれが特色を持っている。そこで各地域SJを紹介するとともに、発行者等のスポーツ権の内容に触れてみたい。
(1)「 nines(ナインズ)」(2011年7月創刊):豊富な写真と多彩な話題で、小学生から高校生、社会人まで野球を愛するすべての人に感動を届けるために発行された、信州の野球に特化した信州野球専門誌(有料)である。販売元長野スポーツマガジン(株)で、編集者は元長野市民新聞の記者である。編集者の自己実現(スポーツ専門誌の発行という夢)という側面を持つといえよう。
(2)「上田スポーツプレス」(2012年9月創刊):しなの鉄道の開業を契機に上田市や佐久地域の同鉄道沿線地域の情報誌を発刊してきた会社により、「上田市スポーツ振興計画」(2012年策定)の普及を目的とし、市民のためのスポーツ情報誌として発行され、市民などに無料配布されている。
同紙は、広く行政情報の提供という側面をも持つ。とともに、発行会社としては、営業活動の一環である。
(3)「スポカラ(SPO COLOR)」(2013年7月創刊):当初、市民のスポカラ制作委員による発行であったが、2015年4月に株式会社組織に変更して配付されているフリーペーパーである。地元情報誌の記者及び信州大学の学生が準備を進めた。県内にある4つのプロ団体(松本山雅等)を中心に、様々なスポーツを取り上げていく方針をとっている。「地域の皆さんと、サポーター、ファンの皆さんとみんなで作るスポカラ“”」をコンセプトとする。特定チームの応援の発展形態(編集者の自己実現でもある)という側面を持つといえよう。
(4) 「ありがと!N(nagano)Sports」(2013年11月創刊):創業46年目を迎える民間の印刷会社が、印刷業から新規発展を目指し、スポーツ・出版事業部を立ち上げた。「スポーツで信州を元気に!子どもたちに夢と希望を」をコンセプトとして掲げている。スポーツを活用した営業の展開という色彩が強い。
(5) 「長野体育ジャーナル」(2014年5月開設):長野県のアマチュアスポーツを幅広く報道し、その普及と振興に役立ちたいとの目的を有し、内容は大会・競技会報道とそのプレビュー報道とするインターネットメディアである。編集者は、元全国的スポーツ紙の記者である。編集者の自己実現(新しいタイプでの地域スポーツ情報の発信)という側面を持つといえよう。
これらの多くは資金面等での課題を持っている。しかし、地域住民(発行者等を含めて)のスポーツの楽しみ(スポーツ権)を実現するものとして、今後の動向を見守りたい。
吉田 勝光